第192章

渡辺芳美は両手で膝をさすりながら、諭すように言った。

「光世、聞きなさい。お父さんが夢枕に立ったのよ。今年、姫代ちゃんと結婚しなかったら……血の災いが起きるって」

丹羽光世はきりりと眉を寄せる。

「いつの時代だよ。そんな迷信――」

「でも、姫代ちゃんとは長いこと付き合ってたじゃない。前にあなた、自分で『嫁にもらう』って言ってたでしょう?」

渡辺芳美は首を傾げた。

「ねえ光世……私、また何か忘れてるの? ここ数年のこと、どうしても思い出せないのよ」

思い出そうとすればするほど、頭の奥がずきずきと痛む。

丹羽光世は眉間を深く刻んだ。

「姫代とは、もう過去だ」

病室の入口。

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